交通事故の損害賠償請求は、その他の損害賠償請求に比べて、発生件数が圧倒的に多くなっています。そのため、事故被害者の補償が政策的に手厚く保護されており、被害者保護の観点から各種制度が設けられています。
1 運行供用者責任の存在
交通事故により死傷した被害者から加害者に対する責任追及を容易にするため、自賠法は被害者が本来負う過失についての立証責任を加害者側に転換しました。これにより、事故が起きた場合に、被害者は原則として損害賠償の支払いを受けることが可能になり、争点の中心が事故発生ではなく、損害額算定に移りました。被害者の最低限の事故賠償を確保することが可能になりました。
2 自賠責保険制度の存在
自賠法は、運行供用者責任の履行を補完する趣旨で、自賠責保険及び政府保障事業の救済することを定めています。これにより、被害者が最低限の被害回復を受けることが可能になりました。
また、自賠責保険の後遺障害等級の認定により、被害者がゼロから裁判所で立証をし、損害額を積み上げる作業を行う必要がなくなり、後遺障害等級に応じてある程度画一的に慰謝料その他の損害を算定することが可能になり、被害者側の立証の手間を大きく省いてくれています。
3 紛争処理センターの存在
紛争処理センターは、自動車事故の被害者と加害者が契約する保険会社又は共済組合(以下「保険会社等」といいます。)との示談をめぐる紛争を解決するため、被害者と保険会社等との間に立って法律相談、和解あっ旋及び審査手続(以下「本手続」といいます。)を無料で行っています。和解あっ旋によって和解が成立しなかった場合、14日以内の申し立てにより審査会による審査手続きに回ることが可能ですが、審査会による裁定については、加害者側保険会社はこれに拘束されるため、同意義務があります。
したがって、保険会社が不合理な主張を貫く場合でも、審査手続きによって裁定に同意させることができますので、被害者にとって早期解決が期待できる便利な制度となっています。
これにより、3~6ヶ月程度での紛争解決が可能になりました。
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